降誕祭の夜
「・・あの~、どちら様でしょうか?」
私は、先程から夕暮れの自宅前に佇み我が家を見上げている中年男性に後から声をかけた。
男性は厚手のモスグリーンのジャンパー姿で、赤と白の不二家の紙袋を右手に提げていた。
「ここは、今でも武田さんのお宅ですか?」
「はい、そうですが・・」
「・・・・」
男性は私の答えに納得したのか、何度か頷いてゆっくり振り返った。
「え?!」
その男性は、驚いて声も出せずに口だけパクパクさせていた私を見て微笑んで言った。
「大きくなったな、ヒロシ」
そう、いきなり私の名を親しげに呼んだこの男性は、40年前に突然失踪・・つまり行方不明というか蒸発した父親だったのだ。
「え?・・だ、だって・・・・」
「うん、驚くのも無理は無いよ」
「お、お父さん?!」
記憶とは恐ろしいもので、鼓膜に響く男性の声は間違いなく40年前まで毎日一緒に暮らしていた父親の声だと、私の脳は瞬時に判定した。
偽物や他人のそら似ではなく本物だ・・と。
「でも、本当に大きくなったな」
幾つになった?ヒロシは・・と、男性は私の頭に手を載せた、昔の様に。
「ご、51になったよ、この間・・」
「そうか、誕生日は先月の26日だもんな」当たってる、私の誕生日。
「ちょ、ちょっと待って?!お父さんなの?だったら・・今までどこで何してたの?」
「・・それに、何でそのままなの?」
「オレが子供の頃と・・まるっきり変わってないみたいなんだけどさ・・」
失踪した当時の年齢が確か43歳だから、そのままだったら今の私よりも8歳も年下という事になる。
私は自分より年下になってしまった父親をしげしげと眺めて、頭が一気に混乱した。
私は、先程から夕暮れの自宅前に佇み我が家を見上げている中年男性に後から声をかけた。
男性は厚手のモスグリーンのジャンパー姿で、赤と白の不二家の紙袋を右手に提げていた。
「ここは、今でも武田さんのお宅ですか?」
「はい、そうですが・・」
「・・・・」
男性は私の答えに納得したのか、何度か頷いてゆっくり振り返った。
「え?!」
その男性は、驚いて声も出せずに口だけパクパクさせていた私を見て微笑んで言った。
「大きくなったな、ヒロシ」
そう、いきなり私の名を親しげに呼んだこの男性は、40年前に突然失踪・・つまり行方不明というか蒸発した父親だったのだ。
「え?・・だ、だって・・・・」
「うん、驚くのも無理は無いよ」
「お、お父さん?!」
記憶とは恐ろしいもので、鼓膜に響く男性の声は間違いなく40年前まで毎日一緒に暮らしていた父親の声だと、私の脳は瞬時に判定した。
偽物や他人のそら似ではなく本物だ・・と。
「でも、本当に大きくなったな」
幾つになった?ヒロシは・・と、男性は私の頭に手を載せた、昔の様に。
「ご、51になったよ、この間・・」
「そうか、誕生日は先月の26日だもんな」当たってる、私の誕生日。
「ちょ、ちょっと待って?!お父さんなの?だったら・・今までどこで何してたの?」
「・・それに、何でそのままなの?」
「オレが子供の頃と・・まるっきり変わってないみたいなんだけどさ・・」
失踪した当時の年齢が確か43歳だから、そのままだったら今の私よりも8歳も年下という事になる。
私は自分より年下になってしまった父親をしげしげと眺めて、頭が一気に混乱した。