「秋の恋」
通りにはラブホテル以外にもポリネシアン風レストラン、ファミリーレストラン、ファストフードなどの店がある。海水浴シーズンも終わり、店前の駐車場はお昼時と言っても数台の車が止まっているだけだ。
「なんでもいいか?」
夏美は頷いた。もともと食欲はあまりない。おにぎりだって空腹だからと言うより、お昼の時間になったから口にしておくという習慣的なもので、失恋してからまだ半月で食欲も戻ってきていなかった。
考えてみたら、誰かと食事をするのも久しぶりだった。
ファミレスに入る前に夏美はもう一度身体中をはたいて、砂を落とした。
向かい合わせに座って、改めてお互いの顔を見た。
「よく見れば、こいつなかなかいい顔じゃん」
「この女、まもとに見れば、可愛いところもあるんだな」
心の中の採点表はお互いよかったようだ。
その日のお勧めランチをあまり話もせずに食べ、食後のコーヒーになってやっと話し始めた。
「なんであんなところでおにぎり出してたんだ?」
「なんでってお昼になったから。気分を変えて外だったら食べられるかなぁと考えた」