「秋の恋」
「俺は藤沢から来た」
「家を聞いてるんじゃ無くて、今、どこから来たの?ってこと」
「あぁ。海から来たんだよ。サーフィンしてた。全くうるさい女がいるなぁと思ってたら、飯なんか出して鳶にごちそうがありますよ~って見せびらかしてどうするんだと見てたよ。そうしたら、案の定襲われてる」
それで走ってきて、プロレス技か……。
確かに危険を察知し、助けてくれた事には違いない。
やっぱりお礼は素直に言うべきだと思った。
「ありがとう」
「さほど、うれしそうでもないな。鳶の餌になってれば良かったか?」
「そんなことありません。ホントにありがと。これで満足?」
「満足ってお前、喧嘩ふっかけているのか?」
もう、こっちは失恋してむしゃくしゃしてこの海に来ているのに、さらにイライラさせられる。
「むしゃくしゃしているうえに、お昼ご飯も無くなった。さらに砂だらけ!これで機嫌がいいなら神様よね!」
「腹減り娘ってわけか。しょうがないな。助けたついでだ。昼飯の面倒も見てやる」
友也は立ち上がり、夏美の腕を引っ張り上げた。
互いに体から砂を払い落とした。
「ああ、気持ち悪い。頭皮までジャリジャリしてる感じ」」
その言葉を合図に友也の両手が伸びてきて、夏美のセミロングの髪をくしゃくしゃにした。