「秋の恋」
「上を見てみろよ。何がいる?」
夏の名残もなくなり、鱗雲がふわふわ浮かび、気持ちの良い青空が広がっている。
「ピーヒョロロ~」と鳶が輪を描いて飛んでいる。
「鳶かなぁ?」
「かなぁ?のんきに言ってるけどな、あれが人の食べ物を取りに吹っ飛んでくるんだぞ?」
「え?じゃ、さっきのバサバサって耳元でしたのは、鳶の襲撃の音?」
「って事だ」
そう言いながら、その男は砂まみれになったおにぎりを拾い、空に放り上げた。
その途端、鳶が急降下して来て、そのおにぎりをキャッチし、空に戻って行った。
「ほぉ・・・・・・」と感心していたら、頭をこづかれた。
「ほぉってなぁ、あのおにぎりがお前の頭だったのかもしれないんだぞ?」
「はぁ、そうですね。ありがとうございました。でも、この砂まみれになった髪とお昼ご飯と、どうしてくれるんですか?まったくもう!」
「チッ!こっちこそ、まったくもうだ」