「秋の恋」
人の気配を感じて目を覚ました。
隣にいる友也が覗き込んでいる。
その距離の近さに体が固まる。
キスされる?
でも友也は夏美の目を見て、すぐに離れた。
ふぅっと体から力が抜けた。
「何もしないって言っただろう?俺を信じろよ。命の恩人なんだし」
友也は寝ている夏美の隣に座って音を小さくしてゲームの続きをしていた。
「眠れなかったのか?」
思いがけない優しい言葉に心がほんの少し動いた。
「うん。久しぶりにしっかり眠った感じ。待っててくれてありがとう」
「ま、袖振り合うも多生の縁ってところだな」
友也がゲーム機を片付け始め「そろそろ、帰るか」とベッドを降りながら声をかけた。
『まじで何もしないで帰る人っているの?隣に眠っている女がいて、手を出さない男っているの?』と首をかしげた。でもこうしているんだから信じるしか無いか。