365 Themes *12/19~停滞中
36.電話(12/11) :ギリヴ
その日かかってきたのは、一本の無言電話。
「はい、もしもし!」
「…………」
「…もしもし?」
「…………」
「もしもーし…」
「…………」
「……あのー、双葉、無言電話がかかってきたんですが…」
「代われ」
「はい」
電話を代わった双葉は、受話器を耳にあててしばらくじぃっと黙り込んでいたが、やがてふっと顔を緩ませた。
「師匠、電話もメールと同じで、話さないとわからないんですよ、って前にも言いませんでした?」
それは、今まで見たこともない表情だった。
何故か、少しドキドキする。
「あぁ、さっきのは新しい仲間です。帰ってきたら紹介しますよ。…はい。では」
電話を切った彼に、ドキドキを胸に抱いたまま話しかける。
「あの…今の、誰だったんです?」
すると、彼は驚くほど優しい顔をして答えた。
「俺の師匠だ。お前の遠い恩人でもある」
それは、僕が今よりもずっと、何も知らなかった頃の話。
それは、僕たちがまだ四人だった頃の話。
作品名:365 Themes *12/19~停滞中 作家名:泡沫 煙