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36.電話(12/11) :ギリヴ


 その日かかってきたのは、一本の無言電話。
「はい、もしもし!」
「…………」
「…もしもし?」
「…………」
「もしもーし…」
「…………」
「……あのー、双葉、無言電話がかかってきたんですが…」
「代われ」
「はい」
 電話を代わった双葉は、受話器を耳にあててしばらくじぃっと黙り込んでいたが、やがてふっと顔を緩ませた。
「師匠、電話もメールと同じで、話さないとわからないんですよ、って前にも言いませんでした?」
 それは、今まで見たこともない表情だった。
 何故か、少しドキドキする。
「あぁ、さっきのは新しい仲間です。帰ってきたら紹介しますよ。…はい。では」
 電話を切った彼に、ドキドキを胸に抱いたまま話しかける。
「あの…今の、誰だったんです?」
 すると、彼は驚くほど優しい顔をして答えた。
「俺の師匠だ。お前の遠い恩人でもある」
 それは、僕が今よりもずっと、何も知らなかった頃の話。
 それは、僕たちがまだ四人だった頃の話。