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35.欠片(12/10) :似てない双子


 今日の授業は魔力感知の実習。
 先生の魔力が込められた魔石の欠片を、この広い構内から一定数見つけて先生に渡せば授業終了。
 …が、魔力感知はあたしの苦手な科目のひとつ。
 魔石をひとつ見つけた時点でさっそく諦めたあたしは、ぜんぜん違うものを捜していた。
 双子、というのは一風変わった存在らし。
 よほど特殊な状況でもない限りは、ちょっと意識さえすればお互いの位置を把握できるのだ。
 ちゃんと訓練すれば、相手の感情や体力、思考までもを遠くにいても知ることが出来る。
 そんなわけで、あたしがニヒツちゃんの待つ教室に着いたときには彼もあたしの接近に気がついていた。
「姉貴、捜すもの違う」
「いーや合ってる。おねーちゃん命令!石をわけなさい!」
「やだ」
「ニヒツちゃんが必要なだけの石を集め終わってるってことはしらべがついてるんだからねっ!」
 もちろん調べてなんかないけど、ニヒツちゃんのことだからとっくのとうに集め終わってるに違いないのだ。
 果たしてあたしの勘は大当たりのようで、ニヒツちゃんは大きくひとつため息をついた。
「姉貴さぁ…俺を捜す労力をちゃんと授業に注げばいいのに…」
「ほんと、ニヒツちゃん捜すんだったらこんなに簡単にクリアできるのにねぇ…」
「そうじゃねぇよ」
 そのとき、ガラッ!と教室の扉が開く音がして、ひょっこりとラウフが顔を出した。
「…うわぁ」
 何かに気づいたっぽいニヒツちゃんがうめき声を上げる。
 もちろんあたしはその想像通りの行動をする。
「あ、二人で何やってるっすか?」
「ラウフも手伝って!ニヒツちゃんの集めた石をわけてもらうの!」
「お、それは名案っすな!」
「おい」
「ニヒツちゃんわーけーて!」
「お願いっす!」
「わーけーて!」
「オレらを助けると思って!」
「わーけーてー!」
「くーだーさいっす!」
「あーもーうるせぇ!」
「お、ついに分けてくれるの?」
 しびれを切らし立ち上がったニヒツちゃんに即追い打ちを掛ける。
「わけねーよっ!その代わり、探し方教えてやるから」
『えーーーーーー』
「ハモってんじゃねぇ。…姉貴、俺を捜すときっていつもどうやってる?」
「え? どうって…わかんないよ。意識してやってないもん」
「じゃ、目つぶって」
「…つぶったよ」
「じゃあそのまま俺を捜そうとしてみ。どうだ?」
 言われたとおりに目を閉じて、目の前にいる筈のニヒツちゃんを捜す。
 姿が見えないなら捜すべきは…ニヒツちゃんの気配。
 やがて、うっすらと目の前に黒っぽい光が見えてきた。
 一見冷たいように見えて暖かく、そして少し寂しい光。
「これって…」
「俺の魔力と魂…のはず。見えたんなら目開けていいぞ」
 目を開くと、暗闇のなかぼんやりと見えていた光の位置にニヒツちゃんが立っていた。
「ラウフの場合はもっと簡単だ。お前、あのアニキに教わったんじゃないか? 身近な人間の捜し方」
「い、一応は…上手くいかないことが多いっすけど」
「それはあいつが遠くにいるからだ」
「え、先生捜すの?」
「違う。わかるだろ…さっき、俺の魔力が見えただろ?アレの応用で、先生の魔力を見ようとすればいいんだよ。やってみ?」
 言われたとおり、目を閉じて先生を脳裏に思い浮かべる。
 やがて見えてきたのは、ひとつの月と無数の星のような魔力の煌きだった。
 びっくりして目を開くと、あたしと同じような表情をしたラウフの顔が見えた。
「よーし、あたしがラウフの分も取っちゃう!ニヒツちゃんありがとね!」
「あぁっ駄目っすそれだけはー!!」
 ニヒツちゃんに手を振って、あたしたちは星々の方へと駆け出していったのだった。