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27.キラキラヒカル(12/2) :灰と白


 今日は、町がやたらと浮かれている。
 店も民家も揃ってキラキラと光る電飾を点け、赤と白の特徴的なコスチュームに身を包んだ人々がそこかしこで仕事をしていた。
 この部屋の向かいで果物を売っている店の娘さんも、みるからに暖かそうなその衣装を着て道行く人に笑顔を振りまいていた。町全体がちょっとしたお祭り騒ぎだ。
 原因はよく知っている。もちろんネコだって、わかってて浮かれているんだろうと思っていた。
「ねぇねぇ、今日はクリスマスなんだって!」
「知ってる知ってる」
「クリスマスだよクリスマス!」
「はいはい」
「ねぇアッシュ、クリスマスって何?」
「だからわかって…えぇ!?お前知らないでそんなに浮かれてたの!?」
「いやー、なんか楽しそうだなーって思ってたら、訳もわからないまま僕も楽しくなってきちゃって!」
 そういえばこいつはそういう奴だった…この短い期間でも把握しきれるくらい、こいつの性格は単純だ。
「ったく…どおりで脳天気に喜んでるわけだよ」
「なんで?」
「クリスマス、ってのはな、神様の誕生日だって言われてる日なんだよ」
 つまり、吸血鬼の息子にとってはそれほど良いとは言えない日。
「えっ…ごめん、知らなかったから」
「いや、わかってるよ。知ってたらお前はそんな風に浮かれないだろうし…それに、オレははじめから吸血鬼として育ってきたわけじゃないから」
 教会に行ったことはないけれど、母さんが生きていた頃には毎年パーティーはしていたし、もちろんサンタも信じてた。
 未だに、この時期になると心の奥底がふわふわして落ち着かないような気持ちになるってことも、否定するつもりはない。
「でもそうなると、ネコは今回が初めてのクリスマスってことになるのか?」
「きっとそーゆーことになるね!こんなに楽しそうなこと、なんで今まで誰も教えてくれなかったんだろ!」
「そうか…じゃあ少しサービスしてやるよ。めったにやらねーんだからな、こんなこと」
 そう言ってオレは、クリスマスキャロルのメロディに乗せてデタラメな詩を歌う。
 その詩は、空に吸い込まれ消えていく。と、その空にどんどんと雲が増えてきた。
 そして歌いきった頃、
「わぁ…!」
「こういうのをさ、ホワイトクリスマスっていうんだ」
 ふわりと落ちてくる白い雪。
「ねぇ綺麗だよアッシュ!飾りの付いた木に雪がかかって、白と緑と赤がすごく綺麗に混ざってる!雪も飾りもキラキラ光っててすごく綺麗!」
「アレはクリスマスツリーな」
「へぇー!!」
 ただでさえ白いものが大好きなネコは、今にも落っこちんばかりに窓から身を乗り出している。
 その頭にも雪が降り掛かっているのに気づいてもいないようだ。
 窓の向こうから漏れ聞こえてくる歓喜の悲鳴。
「そうだな…この雪がやんだら、散歩がてらケーキでも買いに行くか」
「…アッシュ、なんでニヤニヤしてるの?」
「えっ!?」
 ネコの表情やら外から聞こえる歓声やらを受けて、知らず知らずのうちに気持ちが表に出てしまっていたらしい。
 ごまかすように小さく笑ってみせた。
「き、気にすんなよ。で?どうするんだ?」
「行く!!」
 彼のキラキラした満面の笑みは、まるで小さい頃の自分を見ているかのようだった。