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24.新しい靴(11/29) :夕陽菜


 生まれて初めて、ミュールという奴を買った。
 今までミュールに手を出してこなかったのはいろいろと理由がある。
 小さい頃にお母さんのハイヒールをふざけて履いて、そのときに転びそうになったのが怖かっただとか、陸上部のあたしが怪我をしそうな靴を買うのはどうなんだろうとか、スニーカーのほうが好きだとか。
 でも一番の理由は…似合わなかったら嫌だから。
 それが、この前に偶然立ち寄ったお店で初めて「履きたい」と思うようなミュールを見つけて。
 そして、衝動的に買ってみたのだ。
 今日は、それを初めて履いて出掛ける。服装も、それに合いそうなもの、だけど普段と違いすぎないものを一生懸命選んだ。
 ギリギリまでお母さんに確認してもらったりして、万全の体制を整えて。
 そうしてあたしは、ユウとのデートに向かったのだった。

 彼の反応は、期待したようなものじゃなかった。
 どきどきしながら駅の改札をくぐり、対面した彼はいつもどおりであたしの靴とか、気持ちとかに気づいた様子もない。
 それどころか、慣れないものを履いたせいでやたらといろんなものにつまづくし、足は痛くなるし…正直散々だった。
 デート自体は楽しかった。でも何か物足りなさを感じながら、駅で別れることになった。
「じゃ、また明日学校でな」
「う、うん、また明日!」
 彼に見送られながら、なんだかもやもやした気持ちで改札をくぐる。
 もうこの靴は履かないだろうな、なんて思いながら。
「あ、そういやヒナ」
「え、なに?」
 振り返ると、ユウがなんだか少し困った顔で、
「…今度その靴履いてくるときは先に言えな? もっと歩きやすい場所に行くからさ」
「え…!?」
「正直、可愛いとかより危なっかしいが先に立っちゃって…俺が何も言わなかったから気にしてただろ。ごめんな」
「そ、そんな、謝らなくっても…」
「あとさ、その靴履くんだったらスカートぐらい履いたほうがいいよ。絶対そのほうが似合うから」
「わ、わかった」
「じゃ、明日な」
「う、うん!」
 ちゃんと見ててくれてたんだ…!
 その気持ちで胸がいっぱいになる。
 さっきまでのもやもやはどこへやら。
 自分でも単純だなーと思いながら、あたしはうきうきと家へ帰ってゆくのだった。