小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

365 Themes *12/19~停滞中

INDEX|18ページ/45ページ|

次のページ前のページ
 

17.泣いて泣いて泣いて(11/22) :ギリヴ


 泣き声を聞いた。
 声の主はわかっている。このビルの住人で、涙を隠そうとしないのは一人だけだ。
 そいつの部屋に行くと案の定、そいつがベッドの上で膝を抱えて泣いているのが見えた。
「どうした」
「!」
 奴は、気配を消すこともなく入ってきた俺に一切気づかなかったらしく、びくっと身体を震わせると恐る恐る顔を上げた。
「あ…」
「どうした。何かあったのか?」
「い、いえ…」
「また怖い夢でも見たのか」
「…………」
 図星らしい。
「話してみろ」
「え…あ…」
「聞いてやる」
 俺はベッドの脇にかがむと、奴と目線をあわせる。
 奴はまだ離すのを渋っていたが、やがてぽつりぽつりと話し始めた。
「…その…寂しい夢を、見たんです…。誰も彼も、みんな死んでしまって…ボクひとりだけ残る夢…」
 そこで息をつまらせる。何かをこらえるように動きを止め、その何かを振り払うかのように身震いした。
「だ、駄目ですよね、夢なんかで泣いてちゃ…すみません」
「…別に、好きにすればいい」
「…?」
「どうせお前の泣き虫は一日やそこらで直るもんじゃないだろ。泣けるうちは泣いてろ」
「で、でも…」
「だいたい、お前が泣こうが泣くまいが、お前に対する俺達の扱いは大して変わんねぇよ。だったら泣いてたほうが得だろ」
「それってボク、慰められてるんですか…?」
「別に」
「で、ですよね…でもありがとうございます。なんか元気でました」
「…こんなんで元気がでるのかお前は。つくづく変わったやつだな」
 俺の皮肉交じりの言葉はたぶん通じてなくて、奴はただ少し恥ずかしそうに笑った。