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16.気配(11/21) :マスターと魔王


 その日、申し付けられた雑用をこなして帰ってくると、あまりテレビには興味を持たない主殿が、何かの番組を観ながら大笑いしていた。
「気配って!気配っておい!」
 みればそれは、いわゆる心霊番組で、我は心の内で納得する。
 主殿は心霊番組、とくに心霊スポットに突入する種類の番組が大好きで、それだけはほとんど欠かさず観ているからだ。
 そしてその目的は例外なく
「気配なんかするの当たり前だろ!背中にあんなにいっぱい背負ってるんだからさ!」
 こうして「自称霊能者」たちを馬鹿にするためだった。
「…楽しいですか、主殿」
「おかえりー。うん、かなり楽しい」
 テレビから目を離すこともなく、そんな返事だけが返ってくる。
「ほどほどにしておいてくださいね…」
「いいじゃん、この人相当なインチキだし。今だってほら」
 と、画面の隅のほうを示して
「あんなに必死に訴えてるのに全く見えてない」
「どれ…ああ、本当ですね」
 画面には隅の方に数人の霊が立って、霊能者の方にすがるような視線を向けている。
 が、当の霊能者はまったく見当違いの方を見て「あそこに恐ろしい顔の男の幽霊が」などと騒ぎ立てているのだ。
「この人ら、まったく影響力がないってわけでもないのに、それに一切気づかない時点で終わってるよ、こいつは」
 マスターは吐き捨てるように言うと、テレビの電源を切り立ち上がった。
「まぁいいんだけどさ…どうせ手に負えないものとかは本物であるこっちに回ってくるんだから。じゃ、行くぞ」
「えっ…どこへです?」
「え、わかんないの? 決まってるだろ、今のスポットへだよ。困ってたじゃない、あの人達」
 あの人、というのは自称霊能者でも、ましてやテレビのクルーなんかでもない。
 映像に写っていた霊たちだ。
 主殿はああいった番組を観る際、必ずといっていいほど幽霊側へ立つ。
「ああもう…またただ働きですか?」
「タダ働きはしないよ。ボランティアだよボランティア」
 そう言いながら、振り向きもせず歩いて行ってしまう主殿は、つくづく我々の手には負えないなと思う。
 見ず知らずの霊をその場で助けに行くのだから、もう少し、仕えている我々の気持ちを汲んでくれても良いのではないか。
 主殿の歩き去った方を眺めながら、ひとつ大きなため息をついた。