爪つむ女
「和江、今朝はゴメン! ひどいこと言って(>_<)
悪かったと思ってるよ。
いつの間にか和江に甘えてたんだなあ、俺。
もし許してくれるなら、今からデートしないか?
たまには俺のために化粧して、俺が絶対に離したくなくなるようないい女になって来てくれ。
もちろん今のままでも、ずっと俺のそばに居て欲しいって気持ちは変わらないけど…(^^)v
ずっと前に一度待ち合わせした駅のそばの公園覚えてる?
あそこで、あの時と同じベンチに座って待ってる。雄次」
メールを読み終えた和江の瞳から涙が溢れた。
しかしそれは、先ほどとは違う暖かい涙だった。
メールを読み終えた時、それまでの迷いが一瞬にして吹き飛び、和江の頬は幸せ色に輝いた。
そうだ。急いで支度しなくっちゃ!
――そう気付いた和江は、急いで涙にまみれた顔を洗い、クローゼットから、滅多に着ることはないけどお気に入りの、ピンクのワンピースを取り出して身に纏い、最後に、普段は飾りにしかなっていないドレッサーの上の化粧品を手に取った。
同じ頃雄次は、和江のために初めての花束を買っていた。
もちろんメッセージカードにはプロポーズの言葉を添え、和江とのこれからの、思いやりに満ちた幸せな暮らしを思い描きながら。
それから約30分後、花束を持ってベンチで待つ雄次の前に、美しく着飾った和江が現れた。
互いを認めた瞬間二人の顔は、太陽も羨むほどの輝きを放っていた。
人は皆、この一瞬の幸せが欲しくて生きているのかもしれない。
了