ホワイト・グ-ス・ダウン
「これって、白い毛が胸から生えて来てるということ?
えええー、すなわちこれは … ガチョウの毛が生えて来たということじゃん」
そして、シャツをめくり上げて確認してみる。
するとなんと胸から下腹辺りまで、モッサモッサと羽毛が生えているではないか。
特にみぞおち辺りは結構なボリュ−ム。
「今までいっぱい人生やって来て、なんでここへ来てガチョウにならなアカングァ−、グァ−」
高見沢は朝っぱらから腹が立って来た。
「夏子! 夏子! これどうなってんだよ!」とわめきながら、寝室の方へ戻って行くと、夏子はまだ気持ち良さそうにベッドの中。
「夏子、ちょっと起きて見てくれないか」と言って起こした。
その時、高見沢は夏子のネグリジェの胸元辺りに、やっぱり同じように白い毛があるのを発見した。
そして夏子は、眠そうに目をこすりながら … 鳴いたのだ。
「グァ−グァ−」と。
高見沢はこれにはまたまたびっくり仰天。
「グァグァ、夏子、もうちょっとチャントしゃべれよ」
すると、夏子がしどろもどろに答える。
「パパ、グァ−グァ−、
パパこそ、グァ−グァ−言わずにチャントしゃべってよ … ところで、この白い毛、何?
あっ、私達グ−スになったの?」
こんな妻の驚きに、高見沢はブツブツと吐くしかない。
「なんで今さら夫婦そろって、ガチョウなんかにならなアカングァ− …
オ−マイガッグァ−!
これぞ150匹の怨念なのか、
その呪いで、羽毛が身体の細胞と結合してしまったのか、グァ−グァ−」
これを聞いていた夏子が、
「パパ、それでもカフカの毛虫より益しと違う、まあ、いいじゃん … たまには」と。
女はこんな事態に陥っても、なぜこんな無責任な言葉を吐くのだろうか?
実に不思議な事だと、こんな場面で感心してる場合じゃないが、高見沢は実感する。
作品名:ホワイト・グ-ス・ダウン 作家名:鮎風 遊