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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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さくら

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10号で100万円で買うと言いだした。
私はさくらに3月半ばまでに描いてくれるように頼みこんだ。
さくらは5日の休みを下さいと言った。
3月になり、さくらは絵を描き始めた。相変わらず食事は取らず、私が差し入れるさくら餅のみを食べていた。
「描きあがりました」
前の絵よりもさくらの色が映えていた。
そしてさくらの顔色は青白かった。
「今日で暇を頂きます」
「田舎へ帰るのかな」
「はい、桜を見に行きます」
さくらの田舎は、桜の花びらの散らない千本桜の村であった。
それにしても随分とやつれてしまっていた。
娘が言うには、さくらは筆を舐めるだけで絵の具を見たことがないと言った。
不思議なことである。

作品名:さくら 作家名:吉葉ひろし