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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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さくら

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私が千本桜を見に行ったころ、土地の人に尋ねていた観光客がいた。
「良くはわかんねえが、何でも、若いおなごが、桜の花びら食ってしまうと聞いた。だから花は散らねえんだとさ」
「本当に散らないんですか」
「ほら、風が吹いてるのに散らねえべ」
私はもしかすると、桜木さくらはその話の女ではないだろうかと思った。
とにかく不思議な女であった。
桜木さくらがそうであれば300年の年を経ているという。
それにしても、美しいさくらである。
私が1本の桜の根元に腰を下ろすと、急に風が吹き、そのさくらの花びらが散り始めた。
私を包み込むように散った。
翌年そこを訪れると、1本の木だけ枯れていた。
散ったさくらは嫁に言ったからだと言う話を村人から聞いた。
私はそのさくらの木を買い求め、額縁を作った。
その額縁にさくらの似顔絵を飾った。




 
作品名:さくら 作家名:吉葉ひろし