傷
青田はハーレーにまたがり、東北道を北に走っていた。
久しぶりに乗るバイクのエンジン音を、心地よく楽しみながら80キロのスピードを守っていた。
乗用車がものすごいスピードで青田のバイクを抜いて行くが、青田はお構いなしに上品な運転を続けた。
皮のジャンバーにフルフェイスのヘルメットである。どうみても若そうに見える。
ただハーレーを乗っているので、バイク好きにはある程度年齢が解ってしまう。
若者では高価すぎるバイクであった。
風切り音をも気分が良い。風景も良い。何か変わったことで気持ちの切り替えをしたかったのである。
このまま運転を誤れば、死を招くかもしれない。しかし目的の所まで行くのには走り続けなければならないのだ。
いまの青田にどこへ行くあては無かった。
ただ走っていれば良かったのである。
何も考えずに走ろうとバイクに乗ったのだが、山崎の事が頭に浮かんでくる。