傷
「お互い幸せね」
秋草はこのままで帰ることにした。
由美を悲しませてはいけないと感じた。
由美は山崎が離婚していることに、青田との何か関係を感じ始めた。
「山崎は今でも青田を恋してる」
「忘れていたわよ。結婚してる相手が海老原では、好きだとしてもどうにもならないわ」
「そう、良かった。山崎が文集に載せた詩を、私が書いたって青田に言ってしまったの」
「そんなことどうでもいいのじゃないの、昔の事だし」
「ありがとう。気になっていたのよ」
由美は心の中がすっきりした。
山崎がなんとも感じていないことに安堵した。
青田はこの静かな生活を脅かすことは出来ないと感じ始めたが、いつまでもこのままではいけないとも感じた。
誰をも悲しませたくはなかった。