傷
あの時、青田が「好き」と言ってくれたら、自分は学校を辞めずにいたのにと、思い出していた。
退学を決心したのは、何度も学校までいきながら教室に入れなかったからである。青田の顔を見ることがが出来なかったのである。退学の理由を担任に尋ねられた時、正直には言えず、調度病気の母親のことを理由にした。
あの時の惨めな気持ちに、今の気持ちは似ていた。
あなたが私と結婚していてくれたらこんなことにはならなかったのよ。
「実は娘は画家になりたいと言ってますが、私が娘を医者にさせたいのです」
「そんな動機でしたら途中で辞められたら、学校が困るでしょう。退学でもしたら次の推薦が来なくなるでしょうから、校長先生そうですね」
「まぁまぁ。1,2日考えて頂くと言う事でいかがです」
「私は推薦会議に従います」
「では、私ではなく学校の育英資金と言う形でどうでしょう」