傷
青田も秋草もあ互いが確認した。
青田は懐かしく感じたが、秋草は内心青田を確認したことで自分のこれまでの行動を恥ずかしく感じた。
「まだ推薦の決定はされてませんが、お二人のどちらかのお子さんになることは決まっています。そこでの話し合いなのですが、青田さんの方では、秋草さんに降りて頂ければ、6年間の学費を援助したいとおしゃっているのです」
「宜しくお願いできませんか」
青田は秋草に頭を下げた。
「正々堂々と推薦会議の決定に従いたいですわ」
「青田さんにはいろいろ事情があるのです」
校長も秋草を諭すように頭を下げた。
秋草は森田進路指導部長から、自分の方に決まっていると聞いていたので、少し強く発言した。
かって好きになった男からの援助は施しに感じたのだ。
惨めな自分は見せたくはなかった。
青田があまりにも立派になり過ぎている事が、心のどこかで悔しかった。