傷
水沢校長の家は30分で着いた。
黒い塀に瓦の乗った見るからにお屋敷と言った感じの目立つ家である。
「少し先に止めてくれ。エンジンは切ってくれ。人が見えたらすぐに声をかけてくれ」
青田は由美に指示をして車を出た。
身震いをした。寒さだけの身震いではないかもしれない。
下見の時は、塀に張れば人目に附くと思ったが、校長の目に止まればいいと考え直した。
新聞も入るほどの郵便受けに入れた。
車に戻ると、
「次も行くのですか?」
と由美が訊ねた。
新聞配達のバイクが車の脇を通り過ぎた。
「校長先生の目に附けばいいでしょう」
「計画は実行する」
青田は途中で投げ出したくは無かった。
内心は由美の言う通りであった。