傷
公認会計士を先生の呼称で呼ぶのは珍しい事ではなかった。
昼になると、海老原は弁当を2つ広げた。
「先生の分です」
「美味そうだ」
「美味いと思います」
「変だな、海老原さんとこんな風に2人で昼飯を食べるなんて」
「神様は知っていたかも」
「そうかな」
海老原は毎日弁当を作ってくれた。
月末になり給料を海老原に渡した。
「無給の約束だから、いいです」
「弁当代だよ」
「ここじゃ嫌、アパートまで来てくれたら受け取るわ」
「女1人の所へ行くのか」
「待ってる」
青田はそれが何を意味しているかを感じ取っていた。