小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
白久 華也
白久 華也
novelistID. 32235
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

怪我猫看病記 ロッキーのこと

INDEX|5ページ/5ページ|

前のページ
 

自由に




2007年2月
 
 三月めになるというのに・・・。

 まったくなつかず、近づくと威嚇され、引っかく、噛み付くで餌やりにも流血沙汰。
 完全室内飼いでケアしていたが、窓の外に向かって昼夜問わず鳴く。  この鳴き声は威嚇のときの非難がましい声ではなく、哀愁をそそる声。 睡眠不足と引っかき噛み付かれた痛みで、すっかり参ってしまった私を慮って、とうとう(やはり睡眠不足の)夫が決断した。  
 片目は、にごって視力を失っているようだが、化膿もせず、壊死もしなかった。 砕けたあごの骨はワイヤーで固定した成果が出て、作業用皮手袋と作業用ゴム引き手袋を重ねてはめた上から噛み付いて、私の手を痣と傷にしてもなんともないらしい程に回復した。
 さらには、折れた骨盤も、問題なく歩ける、飛び上がる。
 これだけ元気なら、野良として復帰できるだろうと。
 お籠もり処として気に入っていたダンボールに入った所を、そのままふたして、外に出した。

 まさに、脱兎のごとく。
 一瞬にして、姿が見えなくなった。
 後姿を追うこともできなかった。

 思っていた以上の回復。
 もう、あんなに走れるようになっていたなんて、知らなかった。
 ずっと、付き合いたかったけれど・・・  
 君は、お外の子だったんだね。
 ごめんね。閉じ込めて。

 数日たって、お世話になった獣医さんに報告に行った。
 多少自責の念にとらわれていた私を癒してくれた。
 まったくかかわったことのない、見も知らぬ猫をよくここまで面倒してやれたと。 あごのワイヤーも入ったままでも大丈夫だし、目も放っておいても大丈夫。 去勢したし、不幸な繁殖を抑えることにも一役買えたし、何よりも、あのまま放っておいたら間違いなく死んでいたのだから、と。 去勢したから、以前より喧嘩で怪我をすることも減るはずだ、と。

  地域猫の保護活動などをしている人々からすれば、こういう場合、最後まで面倒を見るべきだという意見もあると思う。私もそう思っていた。
 これでよかった、とじぶんに言い聞かせる日々が続いた。
 野良の平均的寿命を思うと、せっかく助かったのに、と切なくなる。


2007年3月

 気持ちの整理がつかないまま、また一月が経った。

  放して2,3日後、息子が河原のほうで元気に走っているのを見たといっていた。
 そして私も、数日前、数軒向こうの家の朽ちかけた物干し台の上で日向ぼっこ(?)しているロッキーらしき姿を見た。
 ちょっと欠けた耳の先や、にごっている左目までは確認できなかった。 よくいるタイプの色や模様だし、遠目に姿を見ただけなので、似た別の猫だったかも知れない。 いまさら、元気でいてほしい、なんていうのは勝手な言い分だろうか?  

 でも、どうか、思いっきり自由を満喫していますように。