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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「神のいたずら」 第十章 約束

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「ええ?そんなに!家の中がぐちゃぐちゃになるよきっと」
「ならないよ。ちゃんと片付けするから」
「だって・・・ご飯食べさせて、お風呂入れて、着替えさせて、お話しして寝かせるんだろう?無理じゃない?」
「貴樹さんがいいパパやってくれたら、大丈夫よ」
「う〜ん・・・そりゃ母さんに手伝ってもらわないとダメだな」

他愛も無い話になって盛り上がったけど、最後は母親が登場して・・・何となくしらけた。4時半を過ぎて碧は挨拶をして貴樹の家を出た。経堂の駅まで二人で手を繋いで歩いて、さようならをした。電車の扉の窓から貴樹の顔が見えなくなるまで手を振って見ていた。
目白駅から家まで戻る途中でコンビニに向かっていた肇と出会った。
「碧!一人か?どこかに行っていたのか?」
「肇くん、うん、友達の家からの帰りだよ。どこ行くの?」
「コンビニだよ。俺・・・彼女と別れちゃった。振られたって言うのが正しいかな」
「そう・・・仕方ないわね。元気だしてね。また見つかるわよ」

弥生の言うとおりになっていた。ちょっと可愛そうにも見えた。

「ただいま!今帰ったよ」
「約束どおりに帰ってきたのね。楽しかった?」由紀恵はなんだか余り嬉しそうな表情になっていないことが気になってそう聞いた。
「楽しかったよ。美味しいケーキも戴いたし。とっても素敵なお家だったし」
「そう、良かったじゃない。今度はこちらに来てもらいなさい。ママにも紹介して欲しいから」
「そうだね・・・そうする。お姉ちゃん帰ってる?」
「二階に居るはずだよ」

碧は直ぐに階段を上がって部屋をノックした。

「入っていい?」
「いいわよ。お帰り・・・ねえねえ、どうだったの?」
「うん、楽しかったよ。素敵なお家だったし」
「そう、貴樹くんと何して遊んでいたの?」
「話ししてた」
「何の?」
「将来のこと、碧がお嫁さんになって子供たくさん作るって言ったり、一緒に子育てしようって話したり」
「ままごとね・・・可愛いじゃないの。それだけ?」
「ままごとじゃないよ!子供じゃないんだから、もう。それだけって何が聞きたいの?」
「碧のことだから・・・貴樹さん、こっちに来て、とか言ったんじゃないの?」
「言わないよ!勝手にやらしいこと想像するんだから」
「珍しいわね、何もしなかったっていうことが・・・さては、向こうのお母様の聞き耳が気になってしまったんでしょ」
「違うよ!碧のこと気になって勉強が手につかないって言ったから、勉強しなきゃ逢わないって、言ったんだから」
「厳しいわね・・・お母さん口調だよ。元気なくしたんじゃないの?彼」
「今度逢う時は・・・いやって言わないって約束してきたから、頑張るって言ってくれた」
「今度逢う時・・・もう直ぐじゃん!ふ〜ん・・・中学二年でねえ・・・期待してるでしょ?」
「してないよ。碧はそのことだけ考えているんじゃないよ。貴樹さんと一緒にいたいから、ずっといたいから、断らないって思ってるの。今までのようになりたくないし・・・そうだ、肇くん、お姉ちゃんが言ってたように彼女に振られたってさっき言ってたよ」
「やっぱりね・・・碧もそうならないようにしてよ。貴樹くんは明日香ちゃんにいい含められたから遊び気分じゃないと思うけど」

そう言われると、簡単に許しちゃうとそれで終わっちゃうのかなあとも思えた。今は成り行き任せにしようと碧は自分に答えを出していた。


三学期が終わって碧も中学最後の年を迎えようとしていた。終業式が終わって部活も無く教室で詩緒里と話していると、清水が入ってきて碧を呼んだ。

「小野さん、ちょっと」
「先生、何ですか?」
「話したい事があるから、明日にでもご自宅に伺ってもいいかな?ご両親に聞いてくれる?」
「構いませんが・・・ちょっと待っててね」
携帯で由紀恵に電話をした。
「ママ?明日先生が来るって言われるんだけど、良かったかなあ?時間?ちょっと待って・・・先生何時ですか?」
「碧さんの都合で構わないよ。何時でも」
「もしもし・・・私に話があるって。・・・うん、解った。先生、何時でも母はいるそうです」
「じゃあ午前中にお邪魔しようかな。11時に行くって伝えておいて。碧さんもいてね」
「解りました。言っておきます」

何の話だろうと帰り道に考えた。ひょっとして早苗とのことが決まったのかな、と気付いた。そう言えば、気にしてなかったなあと反省した。紹介したままどうなったか尋ねてなかった。失恋したことや、貴樹のことで頭がいっぱいになっていたことを少し反省した。

清水は約束どおりに11時にやってきた。
「お邪魔します。清水です」
「先生どうぞお上がり下さい」由紀恵はそう言って中に招き入れた。
「先生!いらっしゃい」
「お邪魔するよ。悪かったね急に無理言って」
「構いませんよ。話って何ですか?」
「碧!急かさなくてもいいんじゃない?すみませんね、先生」
「お母さん、いいんです。直ぐ話して帰りますから」
「お飲み物何にされます?コーヒーか紅茶か・・・」
「ありがとうございます。お気遣い無く・・・」
「先生はコーヒーだよ、ママ」
「じゃあ今淹れますからごゆっくりなさって下さいね」

「小野さん、先生ね四月から転勤するんだ。以前からお願いはしていたんだけど欠員が無くて今年になってしまった」
「やっぱりそうだったんですね」

優が聞いた噂は一旦否定されたが、やはり本当だったのだ。

「実は母の体調が良くなくて傍に居てやりたいって考えていたんだよ。ちょっと重い病気で深刻なんだ。妹が居るけど外に出ているから世話出来ないし、父が休みの時は世話しているんだけど、仕事の関係で十分じゃなくて・・・それで今月で退職して母の世話に専念するって言うから、先生が一緒に暮らして経済的な手助けをしようと考えていたんだよ」
「そうなんですか、大変ですね。じゃあ、早川先生のことどうされるのですか?」
「それを話しに来たんだよ」
「えっ?どういうことですか?」
「ああ、家は新潟なんだけど早苗さんに、事情を話して着いて来て欲しいってプロポーズしたんだ」
「すごい!先生かっこいいですよ」
「そうかい・・・やっと褒めてくれたね」
「どうなったんですか?」
「早苗さんね・・・泣いちゃって・・・私にも母親の世話を手伝わせて欲しい、って言ってくれたんだよ」
「それって、OKっていう返事ですよね?」
「うん、それでね正式に入籍して四月から一緒に暮らすんだ。その事を知らせておきたくて。早苗さんから、ボクに碧さんへ話すようにって頼まれたから、今日お邪魔したんだよ」
「そうでしたか・・・早川先生仕事はどうするのかな?通うの?まさか」
「まさか通わないよ。ハハハ・・・辞めるって。すぐ子供欲しいから、専業主婦やるって言ってくれた」
「ほんとう?すごい決断だな、ビックリ」
「そう思うよ。小野さんに言われた言葉がずっと引っかかっていたみたいだよ。専業主婦だって立派な仕事だって言ったんでしょ?」
「そうだよ。碧はその選択が二人の幸せの選択になったって思うよ」