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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「神のいたずら」 第十章 約束

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「そう・・・良くわかんないけど、お母さんが見たら驚きそう」
「落とそうか?」
「いいよ、そんな事しなくても。とっても可愛いから、さあ行こう」
「どこで降りるの?」
「経堂だよ」
「ねえ?先に買い物して行かない?」
「そうか、そうだったね。忘れそうになっていた。外に出ようか」
「うん・・・」碧は手を繋いで駅の外に出た。何軒かショッピングをして二人でお揃いのTシャツを買った。碧は菓子屋で貴樹の家に持ってゆく手土産を買った。由紀恵にそうしなさいとお金をもらってきたからだ。

電車は経堂に着いた。北側の住宅地を歩いて10分ぐらいで家に着いた。
「お邪魔します。初めまして、小野碧です」
玄関で迎えてくれた貴樹の母親は碧を見るなり、
「まあ!素敵なお嬢さんね。どうぞ上がって」そう声を掛けた。
「これ、母から言い付かってきました。受け取ってください」
「ご丁寧にありがとうございます。気を遣って頂かなくても良かったのに・・・貴樹、ご案内して」

リビングのソファーに腰かけて、少し貴樹の母と話をした。
「お話しは聞いているのよ。中学二年生ですって?」
「はい、14歳になりました」
「信じられないわ・・・こんな事聞いて怒らないでね。顔立ちがハーフのように見えるんですけど、そうなの?」
「クォーターなんです。父方の血がそうなんです。ロシアです」
「それでなのね、髪の色も目の色も違うのは。貴樹と同じ高校を目指していると聞いているのよ、本当なの?」
「はい、今のところそうしたいと思っています」
「じゃあ、勉強も出来るのね」
「いいえ、普通です」
貴樹が口を挟む。

「碧ちゃんは入学した時からずっと試験で全科目100点を続けているんだって・・・学校始まって以来らしい」
「そうでしたの・・・貴樹は母親の私が言うのもなんですが、とってもいい子なの。明日香と違って真面目だし。ずっと仲良くしてやってくださいね・・・」

ハイ、と返事したが、ちょっと不安がよぎった。

碧が感じた不安とは、母親が貴樹のことを溺愛していると感じられたからだ。自分はまだ子供だから気にされていないだろうけど、もう少し大きくなったらきっといろんなことを言われるようになると想像した。

碧の父や母も同じように愛している。子供だから当たり前のことだろうが、男というものは思春期ぐらいから母親を避ける傾向になる。これが自立への一歩だ。ここで間違うとマザコンになってしまう。それが心配に感じたのだ。

「貴樹、お部屋片付けておいたから案内してあげたら?」
「母さん、ありがとう。そうするよ。碧ちゃん、行こう」
「うん、では失礼します」
「挨拶がしっかりと出来るのね・・・偉いわ。ご両親のご教育がいいのね。後でケーキ持っていくから待ってて。碧さん、飲み物は紅茶でいいかしら?」
「はい、ありがとうございます」

階段を上がって二階にある貴樹の部屋に行った。隣は明日香の部屋だったから、碧は自分の家と同じようだと思った。
綺麗に片付けられている部屋は男子の部屋と感じさせる雰囲気がした。

机の上に出してあった学校の教科書と参考書が開いたままだったので、
「勉強してたの?」そう碧は聞いた。
「うん、午前中ね・・・物理が難しくて、理科とは違うよ」
「そうなの・・・」隼人には得意の科目だった。

じっと教科書を見て、ページをめくり懐かしんでいた。

「碧ちゃん見てるけど・・・解るの?もしかして」
「ううん、難しいこと書いてあるなあって・・・見てただけ」
「ビックリした、そうだろうね。それより何しようか?ゲームする?」
「ゲームはしないの。家に居るときは本読んでる」
「珍しいね、今時ゲームやらないなんて」
「そう?あまり友達とそういうことしないから、やれば楽しいでしょうけど。貴樹さんのこともっと聞きたい」
「なにを?」

碧は机から床に座って貴樹と向き合った。今にも中まで見えそうなスカート丈をちょっと気にしながら・・・

ノックが聞こえてドアーが開き、母親が紅茶とケーキを持って入ってきた。机の上に置いて、「今日はゆっくりしていってね。帰りは明日香に送らせるから」そう声を掛けられた。
「ありがとうございます。母から、明るいうちに自分で帰ってきなさい、と言われていますのでそうします。お気遣いだけ頂いておきます」

ちょっと驚いたような表情をして、母親は答えた。
「そう・・・残念だわ。夕飯ご一緒にと思っていたのに。私からお母様に電話をしてお許し頂こうかしら。それなら構わないよね?」
「はい・・・でも、初めてお邪魔してちょっと厚かましいって思いますので、この次に甘えさせて頂けないでしょうか」
「まあ・・・しっかりとされてるのね。感心したわ。じゃあ、この次はそうして下さる?主人にも是非会わせたいですし」
「嬉しいです。また呼んで頂けるなんて・・・楽しみにしています」

本当はゆっくりしたかったが、今日は帰ると決めてきたのでそう言った。貴樹は少しつまらなさそうに、
「早くに帰るの?なんだかつまんないよ・・・」
「ゴメンね・・・ママと約束してきたから。この次はゆっくりと来させて」

何を思ったのか、貴樹は碧の隣にくっ付くように座ってきた。母親に悟られないように小さな声で、
「碧ちゃんが好きだよ・・・今度来たときは、もっと仲良くしたい・・・ダメ?」
「お母様がいらっしゃるわよ・・・そんなこと出来ない」
「まだ早いって言うこと?」
「ちがうの・・・恥ずかしいから」
「怒った?」
「ううん、そんなことないよ」
「勉強が手に付かない・・・碧ちゃんのことばかり考えているから」
「お母様にお叱りを受けるわよ。そんな事知られたら・・・どうすればいいの?わたしは・・・」
「・・・」貴樹はじっと碧の目を見た。

なんでもしてあげたいと思った。自分のことを思ってくれることが嬉しかったから。勉強がおろそかになっては交際する意味が無くなる。碧は考えた。

「今度ここに来た時は貴樹さんの思っている通りにする。いやって言わない・・・今日は我慢して」
「本当?ウソじゃ無いね」
「うん・・・約束する」
「勉強頑張るよ!碧ちゃんに嫌われたくないからな」
「そうよ、成績下がったら・・・逢わないから」
「厳しいなあ・・・母さんみたいだよ」
「何でもお母さんなのね」
「気になる?なんで?」
「気にならないよ。優しい貴樹さんが好きだから。お母様きっと頼りにされていると思うから、頑張らないとね」
「そうなんだ。父と違ってなんか感じるんだよな、期待って言うのが。勉強が出来る碧ちゃんのことすごく気に入っていると思うよ」
「嬉しいわ。でも私は勉強が一番って思わないから、ひょっとして進路変更するかも知れない」
「どういう事?東大やめるっていう事?」
「医者になることしか考えなかったけど、それでいいのかって思うようになったの」
「たとえば何?弁護士とか?」
「違うよ、好きな人の奥さんになって子育てするの。たくさん生んで、賑やかで楽しい家庭を作りたいって・・・」
「女の子らしいね・・・そんな碧ちゃんも好きだよ。早く大人になって僕のお嫁さんに来て欲しいな」
「うん、たくさん子供作ろうね・・・男の子が三人と女の子が二人ぐらい欲しい」