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てっしゅう
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「神のいたずら」 第十章 約束

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「そうなの!じゃあ、色々言われるのね・・・私がみずがめ座って言ったら、なんて言ってくれるのかしら」

しっかりと繋がれた手は碧にあることを予感させていた。

待ち合わせの浅草に碧と貴樹は戻ってきた。雷門の前ですでに待っていた弥生たちは二人が手を繋いで歩いてきたのを見て、驚いた。

「あなたたち・・・もう仲良くなったの?」弥生が聞く。
「お姉ちゃん、貴樹さんのこと好きになった」
「はや!」
「いいじゃないの・・・碧のこと好きって言ってくれたし」
「そうなって欲しいとは思ったけど、ゆっくり考えるって言ってのは誰?」
「今日一日ゆっくり考えたよ」
「そういう事ね・・・あなたのゆっくりって」
「いけないの?」
「自分のことだから、好きにしていいのよ。貴樹さんちょっと大人だから、甘えられるだろうけど我儘言っちゃいけないよ。それと・・・」
「解かってるよ。それと何?」
「そのときが来たら大切なこと忘れないようにするのよ」
「その時って?・・・うん、そういう事ね。大丈夫・・・」

明日香も貴樹に弥生と同じように姉の立場から意見した。
「碧ちゃんはお姉ちゃんの大切なお友達の妹さんだから、遊びはダメよ。それと勉強が優先だから、大学に合格する目標を失わないでね」
「解かってるよ・・・そんな子じゃないよ碧ちゃんは」
「違うの。あなたが夢中になって自分を見失わないでね!って言ってるの。碧ちゃんはしっかりしているから、まだ中学生だけど大丈夫」
「そんな・・・ボクの方が子供だって思ってるの?」
「そういう面ではね。ダメよ、焦っちゃ・・・ゆっくりでいいの。仲良く付き合っていって欲しい」
「お姉ちゃんは心配性だね・・・碧ちゃんのお姉ちゃんもそうだって言ってた。どこも同じなんだね」
「当たり前でしょ!兄弟なんだから・・・」

自宅に帰ってきて着物を脱いで楽にした碧と弥生は、
「着物って疲れるね、碧」
「うん、うまく歩けなくて・・・手を繋いだのもその方が歩きやすかったから」
「そう・・・いい理由になったね」
「違うって・・・人ごみで歩きにくかったから・・・」
「いいのよ、理由なんて。あなたが好きになったからそうしたんでしょ?それでいいのよ」
「貴樹さんに、自分のこと全部話した・・・大切にしてくれるって言ってくれたよ」
「良かったね・・・これであんたの思いが叶えられそうね」
「ほんと?そうなる?」
「きっと・・・ちょっと心配だけどね」

弥生の心配は別の意味で碧に降りかかる。

26日の夜携帯に貴樹から電話が掛ってきた。
「遅くなってゴメン・・・今、塾から帰ってきたところ。誕生日おめでとう。今度の日曜日に逢ってお祝いしよう。どう?」
「ありがとう、日曜日は多分大丈夫。でも外は寒いよ。何処で逢うの?」
「そうだな、お金もないし僕の家に来る?」
「迷惑じゃないの?」
「ちょうどいいや、紹介出来るし父はいないけど、母は居ると思うから」
「お母さんに紹介してくれるの?中学生よまだ」
「うん、今日話しておくよ。安心して。プレゼント何がいい?高いもの買えないけど、2000円ぐらいなら頑張れるから」
「考えてなかった。碧は逢えるだけでいいのに。無理はしないで」
「無理なんかしてないよ。碧ちゃんが喜んでくれたら、ボクも嬉しいんだよ。ユニクロにでも買いに行こうか?」
「そうね、じゃあそうして。お昼ご飯済ませてから、行くね。何処にする?」
「新宿の小田急線乗り場で待ってるよ。そこから一緒に行こう」
「ありがとう、じゃあ1時半に待ち合わせでいい?」
「解かったよ。帰りはお姉ちゃんに家まで送ってもらうようにするから、心配しないで」
「ママにそう話しておく。じゃあね」

碧はプレゼントしてくれるという気持ちが嬉しかった。自分の小遣いを少し出して、お揃いの何かを買おうと考えた。弥生に貴樹の家に行くと話したら、
「ママにちゃんと話して出かけるのよ。それから、明日香に送ってもらうんじゃなく、明るい間に自分で帰ってきなさい。最初はそうしないとダメ」と言われた。
「そうなの?送ってくれるって言ったんだよ」
「厚かましいって思われちゃうよ。早めに失礼して帰ってきなさいね」
「うん・・・中学生だもんね、碧はまだ・・・そうする」
「いい子ね・・・向こうのお母様に気に入ってもらえるといいわね」
「可愛くしてるから・・・」
「ぶりっ子するのね」
「違うよ!おとなしくしているっていう事」
「良く似たようなものよ。あんたはそれが出来るから、怖いよ」
「お姉ちゃんは出来ないの?」
「初めから大人しいから・・・変らないの」
「自分だけ・・・いい子ぶってる!おとなしいんじゃなくて、お姉ちゃんは怖がりなだけだよ」
「言うね・・・まあいいけど、貴樹くんを誘惑しちゃダメだからね!」
「しないよ・・・そんなこと・・・もう」

何か話すと・・・こうなってしまう、いつもの姉と妹であった。

1月最後の日曜日が来た。昼ごはんを食べて碧は部屋で着替えをしていた。ノックして弥生が入ってきた。
「あら!地味な服装ね・・・ジーンズで行くの?可愛らしくミニで行ったら?」
「お姉ちゃん、おとなしくって言ったじゃん!」
「それは、気持ちのこと。格好は可愛くしてゆかないと・・・せっかく誕生日の日に出かけるんだから」
「うん・・・じゃあ、何着てゆこうかな・・・」
「私が選んであげるわ・・・そうね、これにしなさい」
「じゃあ、レギンス貸して」
「いいわよ、待ってなさいね」

弥生は前に貸した自分の黒いレギンスを渡した。胸元に花柄の刺繍が付いたお気に入りのワンピースに着替え直した。

「よく似合うよ。碧は細いし足が綺麗だからミニがいいよ。そうだ!待ってなさいね」そう言ってまた自分の部屋に戻って、何か持ってきた。
「これね、サイズ間違えて買ったの。少し小さかったんだけど、今の碧なら合うかもね。ワイヤーが入っていて形がはっきりするから、着けてみなさいよ」ピンク色の下着をそう言って見せた。

「貸してくれるの?大きくない?」
「着けてみなさいよ、早く」
「ここで?」
「恥ずかしくなんか無いでしょ!お姉ちゃんなんだから」
「そうだけど・・・」
後を向いて着けてみた。振り向いて弥生を見ると、
「大丈夫みたいね・・・へえ〜あんたも大きくなったわね、知らない間に」
「最近そう感じるの・・・もう直ぐお姉ちゃんに追いつくよ」
「そうなるといいわね」

中学生とは思えないほどはっきりとした胸元に見えることに自分で驚いた。鏡に写る姿は、どう見ても一人前の大人に見えた。コートを羽織って、マフラーをして待ち合わせの新宿駅に向かった。周りの男子の視線が気になるぐらいにじろじろと見られた。父親の特質がよりはっきりとしてきて、顔立ちは完全にハーフに見えるぐらいに目鼻立ちがはっきりとしていた。


待ち合わせ場所の小田急線乗り場にやって来た碧を見て、貴樹はため息が出た。着物の時とは違う大人のムードがあったからだ。
「碧は中学生じゃないみたいだよ。化粧してきたの?」
「してないよ、どうして?」
「光っているように見えたから・・・」
「お姉ちゃんが、ラメ入りの下地塗ってくれたから・・・でも、化粧はしてないから」