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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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それぞれの路

 

宏は公務員試験に失敗した。
原因の一つは幸子への恋心である。幸い画廊に就職できた。
宏は絵が好きであるからむしろこの方が良かったと考えていた。
幸子は定時制高校に通学していた。
しかし考えていたほど楽なものではない。
5時まで仕事をして、5時30分までに学校に行かなくてはならない。どうしても遅刻になる。
4時30分で仕事を辞める交渉をしたら1時間分の給料を引くというのだ。
10時に寮に帰ると体はくたくたに疲れた。
自分で選んだ道と幸子は耐えた。
難しい勉強になると宏を思い出した。けれど逢えば自分がだめになる様でそれは出来なかった。
2年生になった年に幸子は20歳を迎えた。
高校卒業には22歳になっている。

幸子は自分には青春がないとも感じていた。
たった一度宏とのデイトが有るだけなのだ。
宏も幸子を忘れることは出来ないでいた。
そんなときに宏は由美を知ってしまったのである。
高校2年生の由美に恋心は感じないでいたが、由美からの手紙はいつも逢いたいと書いてあった。
宏は一度絵を見せただけでそれ以外は逢わないでいた。
逢うことで由美の大学受験に影響を与えるかもしれないと考えた。
余りの由美の催促に逢う約束をした。

境内には男の子も居なくなっていた。
白い蝶がひらひらと飛んでいた。
鳩は降りて来ては餌の無いのに探し回り、やがて諦めたのか、いつものことなのか飛び立つ。そして違う鳩が舞い降りてくる。
「大学はどこにした?」
「美大です」

作品名: 作家名:吉葉ひろし