蝶
「嬉しい」
宏は由美がブルームーンを見た時、言った言葉が気になっていた。由美を一流の画家に育てて幸せにしてやりたい。
宏は由美から離れようと考えた。
宏は由美とは金で済ませたかった。そのために由美の気持ちを絵に集中させたかった。
その夜も宏は由美を抱いた。別れると決めていながら自分の欲望を抑えられない。今の由美は幸子や真理恵よりも遥かに魅力があった。
誰も悲しむ者がいないなら、由美といつまでもいたい。
宏は幸子の時もそう思っていたことを思い出していた。
愛とは一人の者にしか許されないのか、2人3人と愛の感情を抱いてはいけないものなのか。
由美や幸子や真理恵に男がいれば宏は許せないだろう。
宏は勝手なことを考えていた。
一度捕えた蝶を
網から解き放つ決心をした。