蝶
宏は由美の個展の計画を立てた。愛画廊の宣伝用雑誌に由美の特集を組んだ。
評論家には普段の3倍のギャラを約束した。中堅の画家にもコメントを寄せてもらった。宏が絵を買い取っている画家たちである。
個展の当日は生花で会場は埋め尽くされたと言っても過言ではない。すべてが宏が手配したのである。
由美も華やかである。絶えず笑みをたたえた顔は、絵を一層引き立てた。
敢えて販売はしないでいた。宏はもう少し評価を上げてから売りに出そうと考えたのだ。
5日間の由美の個展は盛況に終わった。
スタッフ達との打ち上げが終わった。2人だけになった。
「パリに行って勉強してこいよ」
「行きたい」
「1年間は金の面倒は見る。後は好きにしたらいい」