蝶
由美には高級車を買ってやると言った。
「嬉しいわ」
本当に由美は喜んでいる。
宏はくちずけをして、さようならと言った由美の声を感じた。
「自然は美しいものを作れるのね」
その言葉も思い出していた。
変わってしまったのは自分であると宏は感じた。
由美を道具のように扱った自分を恥じた。
夜空には満月が出ていた。
「今日の月、ブルームーンなのよ.これを見ると幸せになれるのですって」
裸の由美は宏に体を寄せた。
子供のころ蝶を取っては、三角の折り紙に入れてきれいに殺していたことが、今残酷に思えた。
由美も幸子もこのまま少しずつ殺していくのではないかと、ふと宏は感じ始めていた。