蝶
洋品店や、デパートに行きYシャツやスーツのイニシャルの注文を受けようと歩いた。
木綿の生地にアラビア文字の見本を持って歩いた。
今までは手刺繍でやっていた仕事である。ミシンで出来るのかと不審がる担当者が多い。
幸子は自宅に案内して実演して見せた。
そんな努力と、幸子の明るさで仕事の注文が来始めた。
打ちかけの刺繍も手掛けた経験で、校旗や社旗の見本を作ると、安いフロッキイ加工より見栄えが良いと注文が入った。
幸子の仕事は軌道に乗り出した。
翌年2月2800グラムの女の子が生まれた。
名前を愛とつけた。
幸子27歳であった。
愛を抱き上げるのが幸子一人なのが、覚悟していたはずなのに悲しい、
幸子はその分強くなる決心をした。