蝶
女の子
幸子は宏と逢ったあの日から数えて3ヵ月後に、体の異常に気がついた。
妊娠したのである。
幸子は大学の4回生の時である。幸子は迷った。
大学はやり直すことが出来る。しかし宏との子はもうこれきりなのだ。
願っていた訳ではなかったが、出来ると嬉しい。
大切にしたいと思う。
子を産む決心をすると、生活の糧を求めなければならない。
手元にある金は、後期の授業料である。
大学に休学届を出した。
その金で刺繍ミシンを購入した。
幸子の住んでいる所は浅草である。
アパートは2階であったが、1階に移った。
ミシンの振動があるからであった。
浅草には手刺繍をやる店が何軒かあった。
相撲の化粧回しなどである。