蝶
今の幸子には宏の言葉が何よりも嬉しく思えた。
「ね、今夜はなんでも私のいうとおりにして欲しいな」
「いいよ」
宏は幸子の握る手の強さにそう答えてやりたいと感じた。
「前のホテルで食事しましょ」
ばんな寺のすぐ前にある。
手を握り合ったまま歩いた。
ホテルの1階は中華の店である。
「明日の朝帰ればいいわね」
「…実は」
「部屋の予約しておくから」
幸子はロビーに行った。
「最上階が取れた」
「ふた部屋とってくれた」
「心配しないで、コースでいいわね。お酒は」
「ビール」
幸子はボーイに注文した。