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南 総太郎
南 総太郎
novelistID. 32770
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幽霊機関車

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                                                                      その頃、S寺の仁王門辺りで話し声がしていました。
驚いたことに、二人の仁王が会話を交わしているではありませんか。
「おい、黒いの。いるか?」
「ああ、赤いの。何だな?」
「おめえも酔狂な男だな。物貰いの真似を始めたかと思うと、黒焼きにされ、挙句の果ては、畜生墓などに捨てられて」
「俺たちゃ暇だからな、時には外へ出て人間共をからかいたくもなるわな」
「一年も経って、なんでまた亡霊の真似などしたんだ」
「退屈しのぎよ。可愛い坊主も結構楽しんでいたようだ」
「おめえはあの小僧がお気に入りのようだな」
「以前はよく遊びに来たもんだ」
「そうよな。俺たちが珍しかったんだろうよ」
「ところで、おめえは何で又あの二人を殺しちまったんだ」
「俺も退屈まぎれに汽車ごっこをしたまでよ。おめえの仇をとったのよ。いわば天罰ってものよ」
「大きなお世話だわい」
「肝心の奴を、今夜辺り轢き殺そうかと思うんだが」
「止めとけ、止めとけ」
「あ奴が、一番の悪と思わねえか?」
「いや、そうは思わねえ」
「何でだ?」
「親父には俺を殺す気はなかった」
「爺はどうだ?おめえを焼き殺したぞ」
「あの爺も殺すつもりで火を付けたわけじゃねえ」
「じゃ、酒屋の倅は?おめえを畜生墓などに捨てたぞ」
「あれとても、親父に断れずに仕方なしにやったことだ」
「それじゃ、誰も悪くねえことになるわい」
「そのとおりだわい。おめえは大体そそっかしいのよ」
「仕方ねえ。元に戻すわい。そーれ」
赤い仁王はそう言うと、息を止めて「ん」と力んだ。

 Y町の酒屋では死んだはずの息子が突然風呂から出て来て、
「ああ、いい湯だった。あんまり気持ちが良いんで風呂ん中で寝ちまったよ」
と、驚く家族にそう言った。  
 一方、「ぶっ潰れた家」では、囲炉裏端で居眠りしていた爺さんがふと目を覚まし、周囲を見回しながら、
「あんれ、おっらあ、すっかり寝込んじまったわい」
と言うと、また傍らのメチルアルコールの瓶に手を伸ばした。

                   (おわり)
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作品名:幽霊機関車 作家名:南 総太郎