緑の季節【第三部】
「沙耶ちゃんは、どう?僕の方があの時の返事を待っているほうだと。沙耶香の特別になれたのかな」
「え?」
「クリスマスの時、一人の男としてみてくれるかと聞いたら考えるって言ったでしょ。
それから、まあ嫌われてはないなということはあったけど、沙耶香を特別な、将来を一緒に過ごす相手と思っていいのかな」
「結婚を前提としたお付き合いってこと?」
「そのつもりだけど」
沙耶香は大きな深呼吸と笑みを浮かべた。
「友人以上なんだ。なんかすごーい。沙耶香も覚士さんの特別になれたんだ。嬉しい」
沙耶香は、覚士の袖口を引っ張った。
覚士は、道路脇のスペースに停車すると沙耶香にキスをした。
沙耶香は、舌先をのぞかせると、にっこり微笑んだ。
車が、2台ほど横を通り過ぎて行ったあと、再び、車を走らせた。
「いつか、沙耶香の親御さんに会わないとね。その前にママに報告した方がいいかな」
「う、ん。親に話すのに助けてくれるかも。ね」
「沙耶香、それは違うよ。そりゃ、僕も助けはありがたいけど、沙耶香を大切に育ててくれた両親に対してちゃんと受け入れて頂けるように挨拶しないと。特に僕は再婚になるわけだし」
「そうか。そういうのを『けじめ』っていうのね。でも、まず伯母ちゃんに言いたい。
駄目?」
「わかった。いいよ。帰ったら話そう」
「うん」