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緑の季節【第三部】

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車に乗り、行き先を沙耶香に聞いたが、とくに行きたい場所があるわけではなかった。
覚士は、車を走らせた。景色は木々が続く道へと変わっていった。
「まだ桜には早いけど、ドライブにはいいコースでしょ。あーそれとも遊園地の方が良かったかな?」
「いいえ、こちらがいい。誰かと来た所?」
「いや、一人になってから来るようになったかな」
覚士は、無口になった。
沙耶香も声をかけることができなくなってしまった。
しばらくして、覚士はラジオのスイッチを入れ、話し始めた。
「沙耶ちゃんまで黙っちゃ静か過ぎるよ。何か話していいよ。今度の仕事のこととか。
どんな仕事するの?」
「うん。デザインの会社。店の包装紙の柄とか商品の模様とかを考えたり、WEBの事をする人もいたりって感じ。まだどんなことができるか、わからないけど勉強したことが少しは役立つといいなと思って」
「なんかカッコいいな。頑張ってね」
「もう来週から行くことになってるの。入社式は4月だけど、とりあえずバイトで会社のこと覚えなさいって」
「そうか。じゃあ・・」
沙耶香は、少しうつむき加減に黙った。
「どうしたの?」
「ねえ。沙耶香は、真壁さんとどういうの?付き合ってるの?恋人?」
沙耶香の言葉は、覚士には意外だった。

作品名:緑の季節【第三部】 作家名:甜茶