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緑の季節【第三部】

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沙耶香は、自分用のロケットを開けると、頬を膨らませた。
「あれ、覚士さんが居ない。どうして?」
「いまさら、僕の写真など入れられない。でもこれを沙耶香に渡さなければと思って」
「じゃあ、あそこ行こ」
沙耶香は、店を出て足早に近くのショッピングセンターのアミューズメントコーナーへと向かった。
「はい、400円」と掌を広げた。
覚士は、ポケットから小銭を取り出すと沙耶香に渡した。
「一緒に撮ろう。ね。入って」と半ば強引にプリクラのブースに覚士と入った。
「ちゃんと笑ってね。ほ、ら。ずっと残るんだよ。せーの、チーズ!」
「沙耶香も『チーズ』って言うんだ」
「えー、言うよ」
「ふーん」
「なになに・・もういやだなー。さて出来はどうかな。んー少し硬いな。でもこれがいい」
沙耶香は、写真取り出し口に掛かっていたハサミでロケットに合う大きさに切るとロケットに入れた。
「付けてください。私の最後の宝物だから」
覚士は、沙耶香のペンダントを受け取ると、沙耶香の手をとってその場を離れた。
「覚士さん、どこ行くの?」
覚士は、答える訳でもなく沙耶香を連れて外に出た。

作品名:緑の季節【第三部】 作家名:甜茶