緑の季節【第三部】
「うん、やはり疲れた。あちらの皆さんは会ってもくれないよ。また日を改めないとな」
ゆったりと構える彼にやっと声をかけた。
「あの、怒らないんですか。僕は式を台無しにしたんですよ」
「真壁さん、前にも話したが、私にとって沙耶香はとても可愛い娘なんだ。幸せになって欲しい。だから私はこんなことまでしてしまった。もちろんあの彼が嫌いなわけではない。心から詫びたいと思っている。が、それ以上に沙耶香がこの先、心に嘘をついていくかと思うと、親としては悲しい」
「僕が言えることではないですが、沙耶香さんも彼を好きになったのでは」
「そうだね。嫌いじゃない。好きだと思うが、君への気持ちほどじゃない。わかるよ。
毎日同じところで生活しているのだから」
「でも僕は、沙耶香さんを傷つけた」
覚士は拳を握りしめたまま、沙耶香の父の横でうつむいていた。