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緑の季節【第三部】

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高砂の席に居る沙耶香は、一段さがった来賓席に座る覚士を見つめていた。
司会者の進行アナウンスも場を盛り上げるためのBGMも耳の奥をかすめているだけだった。
メインのスポットライトが高砂の席を照らしている。
隣に座る人はきっと沙耶香の美しく装った姿に満足しながら、上司、友人の冷やかし
いっぱいの祝辞をいつも以上の笑顔で受けているに違いない。
沙耶香も笑顔にはなれないものの、普段よりも濃い目の化粧は幸せに満ちた可愛らしく
明るい女性が嬉しそうにしているように見せていた。
来賓の挨拶も友人の歌も幼き日のスライド映像も(ふたりで撮った写真なんてないね)
興味が持てない。
目の前の料理も(どうして人前で食べさせやっこしなきゃいけないのかな)味わってなんていられない。
和装やドレスへのお色直しも(綺麗、きっと似合っている)選んでいる時が楽しかった。
ケーキカットも(こんな小さなところにナイフを刺すだけなのね)フラッシュが眩しいだけ。

作品名:緑の季節【第三部】 作家名:甜茶