緑の季節【第三部】
会場は、煌びやかな装飾と花で飾られていた。
「君は、ここだ。約束だ、逃げ出さんでくれよ」
示され、名札の付けられたテーブルは、高砂に近い来賓席のようだった。
周りの席にも人が腰掛け始めた。もうこの席を空けるわけにはいかないだろう。
覚士は、その席に座りかたまった。
会場の扉が閉じられ、セレモニーの司会者が語り始めた。
ライトが消され、ピンスポットの照らすその扉が開けられた。
音響はそれにふさわしくやや大きめの音を響かせた。
「新郎、新婦入場です」
場内は、拍手とともに二人の入場を迎えた。
輝くような純白のウエディングドレスに身を包んでいるのは、大好きになった沙耶香。
そして、その横を歩くのは、自分ではない見知らぬ男。
スポットライトに照らされ高砂に着いた二人は、列席者に一礼すると着席した。
宴は始まった。
会場のライトが点った瞬間、沙耶香は眼を疑った。