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緑の季節【第三部】

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沙耶香と出会った季節がまた訪れた。
日差しも暑く、開放的に気持ちがなってもいい季節だというのに、覚士の毎日は会社と自宅と誘われて冷たい生ビールを飲みに行くぐらいだった。
2、3度、水上とも会ったが、あの日のようなことは起きなかった。
その水上にも、吹っ切れたと言っていた彼とやり直すらしいことを告げられた。
覚士は、エアコンの効く事務所と汗だくの外回り営業とで家に戻っては寝るだけ生活を送る日が多くなった。
(毎日が自分だけの時間なんだ)

覚士の気持ちも穏やかになった頃は、秋風が紅葉した葉を散らせる季節になっていた。
いつものように帰宅して郵便受けの配達物を取ると部屋に帰った。
ダイレクトメールの中に白い封筒が紛れていた。
墨で書かれた宛名のその封筒の裏を見て覚士は驚いた。
『新城○○』
その名の右隣りには知らない苗字の名が書かれていた。
(結婚の招待状?)
覚士は、手に持っていた荷物を半ば落としたようにその封筒を開けた。
それはまぎれもなく沙耶香が結婚するという通知だった。
そのやや厚い招待状の間から何か紙片が床にちらちらと落ちた。
走り書きのメモにはおそらく沙耶香の父親の字であろう文字で
『君の席を用意しています。償う気持ちがあれば来てくれ』とあった。
(どういうことなんだ)
そんな疑問も吹っ飛ぶほどに覚士は、頭の中が真っ白になっていくようだった。

作品名:緑の季節【第三部】 作家名:甜茶