緑の季節【第三部】
両親は里実の両親と連絡を取って会う日はすぐに決まった。
双方は、「久し振りね」と旧友にでも会うかのように和やかに話をしていた。
その様子を見る覚士だけが仲間になれていなかった。
「覚士さん、良かったわ。私たちは里実を亡くして子どもがないから 貴方の事、息子のように思ってしまって。今までありがとう。今度は、しっかり幸せになって、もし良かったら子ども、孫を抱かせてくださいね」
里実の両親は、とても明るい表情で覚士を迎え、優しく接してくれた。
覚士は、その四人を前に、沙耶香とのことは少しも言えなかった。
マンションに戻った覚士は、インターネットの検索で調べてみた。
確かに書かれている文を何度も読み返しながら、一度もそれを思いつかなかった自分が
可笑しかった。
そのうち、覚士の頬は、溢れる涙で濡れていた。