緑の季節【第三部】
覚士は、両親に沙耶香との事があるからとの理由で里実との死別離婚の手続きをしたいと相談に行った。
「そうか、では挨拶に行かないとな」
沙耶香との仲がこじれていることを知らない両親は、里実の墓参りと先方へ出向く日を
カレンダーと相談していた。
「はい、コーヒーはいったわよ」
三人は、覚士の手土産の洋菓子を食べながら久し振りにゆっくりと話をした。
「おやじ、どういう手続き(こと)すればいい?」
と、横の母親が熱いコーヒーをこぼしそうになりながら答えた。
「やだ、覚士、本当に知らないの。今まで好きな人ができなかったから里実さんの面影思っているのかとそっとしておいたけど。貴方、誰と離婚するの?離婚には相手がいるのよ」
覚士には、母の言う事が理解できなかった。
「だから、死別の場合、配偶者の死亡によって婚姻関係が終了するの」
「・・・そうなんだ」覚士は何かが抜け落ちる気がした。