緑の季節【第三部】
翌週になっても沙耶香からのメール来なかったし、覚士も連絡が取れなかった。
あの日の夜、電話を数回かけてみたが電源が切られているらしく繋がらなかった。
それは、今も変わらない。
沙耶香の家の近所まで行ってみたが、呼び鈴を鳴らすことはできなかった。
きっかけとなった水上とは社内で顔を合わせても特に意識することのないようにお互い振舞っていた。
どちらかといえば、覚士だけが意識の中にあったことなのかもしれない。
沙耶香とのことがこのままに終わるとしても覚士は仕方ないと思ったが、やはり沙耶香の親には謝っておきたかった。
沙耶香には内緒で週末、沙耶香の父親と会う約束ができた。
沙耶香の父親に会った覚士は、ただただ謝罪の言葉を並べた。
はじめは、何も言わず聞いていた彼は、口元を一文字にしたまま深く息をついた。
「真壁さん、悪いことをしたのは確かだが、どうしてそうなってしまったのですか?ここはその、親の立場はおいて話してくれませんか」
もう二人の仲の修復など難しいと思っていたし、おそらく許しを貰えるなど微塵も思わなかった覚士には、もう会うこともないだろうと 事の成り行きを話し始めた。
(言っちゃった。はあ、殴られたりするかな)