緑の季節【第三部】
点灯している部屋のモニターを押すと鍵が出てきた。
それを取りエレベーターで部屋へと向かった。
その間二人は言葉を交わすことはなかったし、特別な意識も感じなかった。
部屋の鍵を外し、部屋のドアを開けた。
覚士は、先に部屋に入ると、照明を少し明るくした。
「水上さん、少し着ているものを緩めた方が楽だよ。僕は向こうに行ってるから」
「いいんです。ここに居てください。少しじっとしていれば大丈夫だから」
水上は、ベッドの端に腰掛け、眉間に軽く握った手を当てて目を閉じた。
「はい、水。コップに入れる?このまま飲む?」
「じゃあ、このまま」
水上は、ペットボトルの水を2,3口飲むと、蓋を閉め額に当てた。
覚士も少し離れたベッドの端に座った。
しばらくの間、二人はそのまま過ごしたが水上は一向に表情が緩まない。
「もっと、水分取ったほうがいいよ。やっぱり飲みにくいかな、これじゃ」
覚士は水上のペットボトルを取ると蓋を開けて、もう一度差し出した。
水上は、何口か飲み、深呼吸をした。
頬に髪がくっ付いていたのを覚士は指で取り除きながら、彼女の頬の火照りを感じた。
「まだ、気分悪い?横になったほうがいいなら、広いベッドもあるし、ゆっくり休んでよ。まあこんなとこに入っちゃったけど、何するわけじゃないから」
覚士は、水上の気持ちが沈まないように明るく振舞った。
「・・もう少し貴方が早く戻っていらしたなら・・」
「え?」
「私、メールでの貴方をいつの間にか好きになっていて、変でしょ。でも楽しかったんですよ、仕事のメールなのに」
「まだ酔ってるね、水上さん」
「うん、たぶんそう。だから今のことは明日になったら忘れちゃってる、きっと。だから・・そばに居てくれますか?」
覚士は、水上の横に座ると自分に凭れかかるように肩を引き寄せた。
水上の柔らかな髪が覚士の頬に触れた。