緑の季節【第三部】
「高校を出て、京都へ行ったからあまり街の様子知らないの。迷子になりそう」
「今は、表示も増えたからわりとわかり易くなったと思うけど、これからいろんな所へ行こうね」
「覚士さんが案内人ね」
「さて、どこへお連れしようかな」
沙耶香は、覚士の腕に手を伸ばした。
「手、繋いでもいい?」
覚士は、沙耶香の手を握るとふたりは、ぬくもりを感じ合いながら歩いた。
「今度、うちにも来てよ。君を連れて行くの待ってるみたいだからさ」
「はい」
「今日は何時までいいのかな。今からうち・・えっと僕の住んでいる部屋へ来ないか」
覚士のマンションへと向かった。
ポケットから車のキーと一緒にホルダーに付けられた鍵で扉を開けた。
「さあ、どうぞ」
沙耶香は少し躊躇したが覚士に背を押されるように部屋へと立ち入った。
(きっと、ここは・・・)
だが、沙耶香の不安は、すぐに消えていった。
「わあー。覚士さんの部屋っていつもきれいですね。京都のお部屋もそうだった」
「そうかな。物がないだけだと思うけど。男一人だからね、寝られる場所さえあればいいから。それになんといっても 場所(ここ)から会社への交通(アクセス)が便利だからね。
気に入ってる」
覚士は、キッチンへ行くと冷蔵庫の中を眺めた。
「喉渇いたでしょ、冷たい物がいいよね。その辺にでも座って」
沙耶香は、カウンターの所の椅子に腰掛けた。