緑の季節【第三部】
ただまっすぐ彼女の家へ向かうには時間に余裕があることと、気持ちを整える為、途中のファミリーレストランに寄ろうと車を走らせた。
だが天気の良い休日の昼どき、どの店にも人が溢れていた。
通りすがりのコンビニの駐車場で缶コーヒーを飲みながら沙耶香にメールを送った。
《これから行くね。時間通りに行けると思います。よろしく》送信
《気軽に来てね。待ってまーす》
コーヒーを飲み終えた覚士は、エンジンを掛けたが すぐに切った。
そして、携帯電話であるところに電話をかけた。
4、5回のコール音のあと相手の方が出た。
「もしもし、新城さんのお宅でしょうか。真壁と申しますが、今からそちらに伺おうと思いますがよろしいでしょうか」
受話器から聞こえてきたのは、沙耶香かと思うほど明るい声の沙耶香の母親だった。
「真壁さんですか。はい、お待ちしています。お気をつけて」
「はい。では宜しくお願い致します」
電話を切ると覚士は緊張に大きく深呼吸をした。
(ふう、緊張したー。携帯電話がなかった頃はみんなこんな感じで、好きな人に電話をかけていたのかな。誰が出るかどきどきモンなのが何となくわかる。お父さんが出なかっただけでも・・、いきなり切られなくて良かった)
覚士は、再びエンジンを掛けると、コンビニの駐車場から一路、沙耶香の家まで向かった。