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緑の季節【第三部】

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沙耶香からのメールや電話で土曜日の昼過ぎに行く約束になっていた覚士は、明日の手土産にと洋菓子店に立ち寄った。
「ここの美味しいですよね。こんばんは」
「あれ、貴女も買い物」
「ええ、自分へのご褒美。今週も頑張りましたって」
「へえ、そうやって、女性は買うんだ。では、来週もお互い頑張りましょう。お先に」
「はい。お疲れさまでした」
歯切れのいい水上の言葉に、覚士は好感を持った。
 
朝、目覚めた覚士は、ベッドの中で想像しリハーサルしてみるが、納得いく言葉も思いつきはしなかった。
カーテンを開けると、春らしい日差しが部屋に入って来た。
テレビのスイッチを入れると、ちょうどお天気コーナーの時間らしく、初めて見るお天気キャスターの女の子が画面に映った。
(もう、以前の里実に似ていた子は辞めたのかな)
「・・・ということで今日は日中暖かな日差しがあるでしょう。お洗濯はお早めに」
覚士は、昨夜、洗濯機に任せた洗濯物をベランダに干すと、簡易フロアモップで床の掃除をした。
以前と変わらぬ生活のリズムに戻っていた。
「さてと、そろそろ出るか」
覚士は、今日の約束の為にクリーニングに出しておいたジャケットに着替えると部屋を
出た。

作品名:緑の季節【第三部】 作家名:甜茶