陰謀
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三年が過ぎた。三年前に中富が受賞した文学賞を、今年は若い母親が受賞した。二十一歳の美森真里衣である。
中富は三年前の処女作が売れたものの、二作目は売れなかった。三年前、真里衣の才能に圧倒されて書けなくなっていると、別荘の場所及び写真を、写真週刊誌が報道した。「秘密の別荘」が有名な別荘になった。
中富と真里衣は更に山奥へ転居した。中富は真里衣と結婚し、彼女を作家として一人前にすることに、情熱を傾けていた。彼の人気は完全に失墜し、三作目も売れなかった。
その後彼は父親になり、育児に追われることになった。中富は息子の正太に振り回されていた。育児ノイローゼのためにも、新作の小説を書けなくなっていた。彼は真里衣の命令に服従し、育児に専念することになった。
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