陰謀
更に五年が過ぎた。稀に見る人気女流作家となった真里衣の作品により、大きく成長した出版社の社長の竹村正太郎は、以前から中富電気の重役を兼任していた。彼の隠し子が真里衣である。
中富と真里衣の子である正太は順調に成長し、小学生になった。正太のために一家は都市部のマンションに移り住んだ。竹村は中富聖也を、漸く中富電気の経営陣に組み入れることに成功した。育児からは開放されたものの、中富聖也は、その点でも妻の命令に従ったのであった。小説を書きたいという気持ちは、殆ど失せていた。
竹村の出版社と、写真週刊誌の発行元が裏で繋がっていたことを、中富聖也は最近になって知った。その情報はあるナイトクラブの若いホステスからもたらされた。そのホステスは、若い頃の真里衣に似ていた。
了