陰謀
「失礼。またきつい冗談を云ってしまいました。でも、まだ十九です。あっ!真里衣さんは小説が好きだと云いましたね。じゃあ、弟子になってもらいましょう。そうすれば、将来が明るくなります。責任をもってご指導しますよ」
「それも冗談ですよね。わたしは読むのが好きなだけです」
「パソコンは荷物の中にありますか?」
「ありません。貧乏人ですから」
「現在は別荘に三台ありますから、一台を使ってください」
「インターネットに接続されているんですか?」
真里衣の真剣な表情は、中富の気持ちを高揚させた。真里衣も小説を書くようになれば、競争心を沸かせることになるかも知れない。それが刺激になり、創作意欲が高まることになるかも知れない。真里衣の生い立ちのなかでの様々な経験を知り、彼女や母の内面を理解することは、中富の表現力を充実させることにも繋がるのではないだろうか。
「すぐに追加工事をさせます。活用してください」
「ありがとうございます。新進のカリスマ人気作家はもっと高慢で、偏屈だと思ってました。誤解してました。ごめんなさい」
「そうですか。誤解が解けたんですね。改めて、よろしくお願いします」